ベトナムへの海外進出を成功させるために知っておくべき知識と事例
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いま、世界の企業がベトナムに進出し始めている理由
こんにちは。ワークシフトの海外事業サポート部です。
円高に悩む製造業を中心とした日系企業がベトナムに進出し始めた1994年以降、ベトナムは重要な生産拠点、また将来有望な新興市場として注目を集めてきました。
ベトナムはASEANの中でもっとも注目を集める地域
特に2005年に中国の抗日デモが激化したことを受け、製造業などにおける拠点分散先としての「チャイナプラスワン」「ポストチャイナ」が希求されています。こうした流れの中で、ASEAN諸国でも低廉で豊富かつ質の高い労働力を確保できるベトナムが進出先として再びフォーカスされました。
また、人口が9000万人とASEANではインドネシア、フィリピンに次ぐ3番目の多さを誇り、現在も人口は年間約100万人ずつ増加しています。平均年齢も約30歳と非常に若く、今後ますます消費市場としての魅力が増していくことが予想されます。
国家体制の変化により経済成長を続ける
さらに、リーマン・ショックを経てなお、安定した経済成長を続けている点もベトナムへの進出を後押しする要因でしょう。1986年のドイモイ政策以来、ベトナムは計画経済から市場経済へと転換し、国内での民間企業の設立を認めるだけでなく、外国投資法を制定することで投資を優遇し、国策として外資誘致に積極的な姿勢を取っています。1996年には「工業化と近代化」を二大戦略とする方針を採択し、2020年までに工業国となることを目指しています。この方針の下、2007年にはWTO加盟を果たし、EUや旧ソ連圏によるユーラシア経済連合は新興国の中で初のFTA締結国としてベトナムを選んでいます。また、TPPへの参加交渉でも主導的な役割を果たし、最も恩恵を受ける国として世界銀行からも注目されています。そして、2018年からASEAN域内の関税がほぼゼロとなったことで、生産拠点としての重要性が今後ますます向上すると見られます。
日本政府も日系企業のベトナム進出を後押しする動きを見せています。2008年にはベトナムにとって初の二国間FTA(自由貿易協定)が日本と結ばれています。またベトナムは日本にとって最大のODA供与国でもあります。基幹インフラだけでなくソフト面でも、1994年以降の法整備支援において日本が重要な役割を果たしています。
このように、ベトナムは日本を含め世界でも重要な進出先としての地位を確立しつつあります。
海外進出に必要なノウハウや情報は以下のリンクからもご覧ください。
企業が海外進出する際に注意すべきポイントとビジネス上の課題 - ワークシフト
企業が海外展開する際に実施すべき手順とステップとは? - ワークシフト
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ベトナムはいま変化の波の中にいる
こうした重要な進出先となるベトナムははたしてどんな国なのでしょうか。
まず、ベトナムは南北に長い国土を有しています。西沙諸島や南沙諸島の領有権でも話題となっている南シナ海ですが、古くから通商航路(シーレーン)として重要なこの海に広い範囲で面しているベトナムは、港湾国家としての重要性を有しています。特に国内最大の都市であるホーチミン市は海運の要衝として、ベトナム国内の輸出入の半分近くを担っています。
また日本から見ると、ベトナムはASEANおよびインドシナ経済圏へと進出する際、海の玄関口になっています。海路に関して、ベトナムは東南アジア進出の重要な拠点であるとともに、将来有望な消費市場としてアクセスしやすい地理的条件を備えているといえるでしょう。
陸路に関しては、中国と接しており華南地域に近いことから深セン市などにある既存のサプライチェーンが活用しやすくなっています。また、先述のASEAN内でのFTA網の充実や中国に対する相対的な人件費の低さ、労働人口の多さ、安定した経済成長に伴う国内市場の発展への期待感から、地理的な優位を大いに活かすことができると考えられています。
また、ベトナムには儒教の影響が色濃く残り、上下関係がかなり厳格です。こうした年功序列の慣習については韓国や日本とよく似ていると言われ、特にハノイなど北部を中心に年長者を敬う風潮が強く残っています。よく「勤勉」と評されることの多いベトナム人の仕事ぶりですが、その背景にはこうした儒教文化があるのかもしれません。ASEAN諸国の中で見ると、大学進学率は中位なものの識字率は94%と非常に高く、ジェトロの調査でも「従業員の質」を問題視する企業の声は他の新興国と比べてほとんど出ていません。
日本はベトナム人に好意的なイメージを持っている
ベトナムと日本はベトナムの南北統一以来、友好関係を順調に維持しています。こうした国際関係を背景に、日本企業の進出も盛んになっています。その代名詞ともいえるのが1970年代から親しまれているホンダのオートバイです。扱いやすさや燃費、修理のしやすさなどもさることながら、現地の過積載や曲乗りにも耐える耐久性から、日常生活にオートバイを利用するベトナムのユーザーから高い支持を集めています。今でも「ホンダ」と呼べばオートバイとして意味が通じることさえあるように、日本製品への信頼やブランド力はベトナムでは非常に大きなものとなっています。また、コンビニ大手のローソンが現地に研修所を設置し、日本に留学などでやってくるベトナム人や現地進出に向けた店員のトレーニングに活用しています。
また、国際的に見てもベトナムが親日国です。ファン・ヴァン・カイ前首相は親日・知日家として知られ、国家主席など政府要人が天皇・皇后両陛下との懇談や経団連との会合をおこなっており、政治面・経済面双方で「緩やかな同盟関係」を築いています。また日本語教育も盛んで、2016年にはベトナム全土の小学校で第1外国語として日本語を教えることをベトナム教育・訓練省が発表するなど、着実に広がりを見せています。
日本企業によってベトナムに進出するとどんなビジネスチャンスがあるか
世界でもっとも「熱い」経済成長を続けるベトナム
では、ベトナムに進出するとどのようなビジネスチャンスがあるのでしょうか。
現在、多くの外資系企業がベトナムへの進出を試みています。ベトナム国内の物価の低さに伴って労働賃金も安く、人件費を抑えることが出来るため、ベトナムでは前述のような質の高い人材を比較的低コストで確保出来ることで労働市場としての魅力的だと評価されています。そのため、大手企業だけでなく製造業を中心とした中小企業による進出も盛んであり、チャイナプラスワンとしてのポテンシャルを十分に有していると言えるでしょう。
現在、ベトナムではいくつかの産業が中心となっています。ベトナムで伝統的に盛んで、現在は外貨獲得のために政策的に育成されている繊維産業や、2009年にサムスンが輸出拠点として進出して以降盛んになった携帯電話・部品産業といった製造業が主なものです。ベトナムがもともと製造業中心の産業構造であるという特徴から、経験豊富で安価な工場労働者の確保の容易さを見込んで多くの中小企業がベトナムに進出してきました。
元々政治体制の影響もあって国有企業のシェアが全体の割合の多くを占めていたベトナムの産業でしたが、近年では外資系企業の参入を積極的に誘致する動きが見られるため、新たな海外進出先という点で中小企業を中心に多くの日本企業から注目を集めています。また、すでに進出済みの大手企業でも既存の設備・サービスなどへの拡張投資が進んでおり、今後ますますベトナムへの進出・投資は加速していくと考えられます。
所得も上がり、産業構造も変化しかけている
こうした政策的な外資系企業の誘致や投資の加速、国内産業の育成の結果、ベトナムでは同じASEANのフィリピンやインドネシアと比べても貧困率が大幅に改善されています。また、所得階層を見ても中間層が比較的厚く、所得の不平等度が小さくなっていることもあり、増加を続ける人口動態と相まって国内消費市場への期待感も高まっています。製造・輸出拠点としてだけでなく消費市場としての進出先として、ベトナムは魅力的になりつつあるのです。
また、製造業中心のベトナムの産業構造は、近年の経済発展に伴ってサービス産業のシェアが拡大しつつあります。こうしたサービス産業のシェア拡大自体は、他のASEAN諸国の産業構造と比較して大きな違いがあるわけではありません。しかし、先進国と比較してまだまだ低い状況に鑑みれば、ベトナムのサービス業は今後も伸びる余地があり、進出先としてのポテンシャルを秘めていると言えます。金融系のサービスや商品などは特にまだまだ伸びる余地のある産業として魅力的です。
日本企業がベトナムに進出で困ることやトラブル
ここまで、ベトナムに進出することによる様々なビジネスチャンスや企業にとってのメリットを挙げてきました。それでは、進出する際にはどのような課題が生じるでしょうか?ベトナムの進出時に起きる問題やトラブルなどのリスクも紹介していきます。
まだまだ未整備な交通インフラ
一つ目に挙げる問題点はベトナムのインフラの発展が遅れていることです。ベトナム国内では交通インフラがまだ十分に整っておらず、首都のホーチミンでさえも道路設備が不十分な箇所を数多く確認することが出来ます。また、港湾インフラについても貨物需要を見込んで更なる整備が急がれています。
インフラが未整備である理由としては、ベトナムが元々農業中心だったこともあり、急速な経済発展にインフラ整備が追いつけなかったことが考えられるでしょう。それにも関わらず、ベトナム国内では日常生活でオートバイを利用する人々が増えているため、交通インフラが整っていない状況では混雑や交通事故のリスクも高まります。さらに交通インフラ整備の遅れは、南北に長い国土を持つベトナムでは北部のハノイや南部のホーチミンといった大都市のない中部の発展の遅れを招いてます。
しかし、このような国内の問題にこそビジネスチャンスが生まれる期待があります。近年ベトナムは巨額のODA融資をもとに国内の交通インフラの整備を改善を試みており、ハノイではモノレールや地下鉄メトロなどの鉄道計画が進んでいます。また、車や歩行者の交通ルールもまだ十分に統制されていない現状を改善し、交通移動をより便利にするための計画が練られています。ここに着目してベトナムへの進出や投資を行うことで大きな成果が期待出来ます。
現金主義から脱却を目指す
また、ベトナムでは現金決済主義が非常に根強く、銀行口座やクレジットカードの保有率が低い現状があります。そのため、ECの決済においても着払い利用者の比率が高くなっていました。しかし2010年代後半からは世界的なトレンドや中国との距離の近さも相まって、電子決済の普及が急速に進んでいます。政府も税制との兼ね合いからキャッシュレス化を促進する方針をとっており、スマートフォンを用いた電子決済やそれにまつわるサービスはビジネスチャンスが大きいと考えられます。
まだ完全には自由経済市場ではない面も
政治面では、ベトナム共産党による一党体制でありながら、バランス重視のリベラルな体制を採用することで安定しており、治安や社会情勢といった政治リスクは比較的低い国とされています。かつては一党体制ゆえの政府の影響力の強さが懸念されましたが、WTO加盟以降はそうしたリスクも減少しています。その一方で、バランス重視ゆえの法律や細則を制定するにあたっての意志決定が遅いことは否めません。また、経済成長を重視した政策へ傾注していることから建築許可や資金調達、資産登記がスムーズな一方、税法をはじめとした法制の運用が不透明です。特に税制運用の曖昧さについては歳入基盤の脆弱さや財政赤字にもつながるため、税制改革や公共投資における民間利用といった取り組みが求められています。
また、ベトナムは通貨であるドンが慢性的に通貨安であることから輸出インフレが発生しやすい国でもあります。近年ようやく若干の黒字転換をはたしたとはいえ、サムスンの携帯電話・部品産業への依存度が非常に高い形での黒字となっていることから、国内に進出する外資系企業や国内企業保護などのリスクヘッジが必要とされています。加えて、中央銀行であるベトナム国家銀行の政府に対する独立性が低く、計画経済の名残である経済成長率目標を達成するためにインフレ抑制の金融引き締めに消極的であることもインフレ体質の要因となっています。
日本とは異なる個人の働き方
ベトナムに進出した企業で他にも問題とされているのが離職率の高さです。ベトナム人は年功序列にも繋がる儒教の文化を重んじる民族でありながら、一年間でなんと労働者全体の20%近い割合が転職をするというデータが出ています。これはベトナム人の仕事意識に理由があります。ベトナム人は日本の労働者と比べても自身のスキルアップや給与の上昇に重きを置いて仕事を選ぶ傾向があります。そのため、より高い給与や新しく興味を持った分野のスキルを求めて転職を積極的に考える傾向にあります。しかし一方で、このように自身の成長を第一に考える意識からベトナム人の勤勉さや学習能力の高さが伺えます。つまり企業側としては社員が満足する待遇や労働環境などを用意することで現地の人材の職離れを最小限に抑えることが出来れば質の高い労働力が確保をすることが出来るとも言えます。
特に日本からは繊維産業や自動車産業といった製造業系の企業を中心に進出していることから、賃金上昇は製造コストに直接影響することからも大きな課題と見なされています。ベトナムの経済発展に鑑みても、賃金上昇は中間層の増加や貧困の解消をもたらす一方で、一定程度の経済発展を達成した後に成長が鈍化する「中所得国の罠」に陥るリスクもあります。
また、賃金コストを抑えることを優先しすぎると現地の労働者は離職、転職してしまいます。外資系企業が多数進出した結果、ベトナムの人件費は近年上昇しつつあり、優秀な人材に関していえば転職先が引く手あまたな現状があります。企業側もベトナムへの進出にあたっては生産効率や付加価値を向上させるために、教育や職業訓練の高度化、さらにはより良い待遇で優秀な人材の確保をすることが重要となってきています。
ベトナムへ進出するにはどんなことが必要?
以上のことをふまえて、ベトナムに向けて進出するにはどのようなことが必要なのでしょうか。
まず重要なのは、ベトナムという国とベトナム人を知ることです。
これまで、多くの日本企業は低賃金をメリットにした加工輸出拠点、という位置づけでベトナムへと進出してきました。しかし、経済成長や社会インフラの整備などが著しいスピードで進む中、賃金の上昇や他国の外資系企業による人材の好条件での青田刈りも同時に進行しています。特に中間層が増加した今日、優秀なベトナム人材は着実に育成が進んでいます。例えば、海外企業のオフショア開発を担ってきたベトナムのエンジニア達が国内向けのシステムを自らつくりだしていこうとする動きなどがあるように、海外向けの案件を担う中で培われてきた国内産業の成長も起こりつつあります。こうした状況の中、低賃金という短期的な魅力だけでなく、国内市場の発展などの中長期的なメリットを見据えてベトナムへ進出していく必要があります。
家族を重視する文化を理解する必要がある
ベトナム人は儒教思想とあわせて、家族を非常に大切にする文化があります。そのため、離職を防ぎつつ効率的に業務を進めていくには、上司が親のようにディレクションをおこなう家族的な運営や、プライベートでも家族ぐるみで付き合うような関わり方がポイントとなってきます。
そして、ベトナムやベトナム人の文化や習慣を知った上での受け入れ体制の強化が必要となってきます。日本企業は先に紹介したホンダやローソンのように、比較的早い時期から知名度やブランド力が高く、また他国の外資系企業に比べて雇用制度や福利厚生が手厚いことから、安定志向のある層から非常に人気があります。
一方で、チャレンジ精神旺盛で高いスキルを持つ層からみると、給与や昇進機会といった条件面で日本企業はまだまだ課題が多いと見なされているようです。平均年齢が若いベトナムでは若年層でもどんどん管理職に抜擢されるケースが多く、日本的な年功序列での昇給昇格のペースに不満を感じた層が他国の外資系企業により良い待遇で日本企業のスキルや技術を持った状態で引き抜かれてしまいます。
一方で、こうした引き抜きが起こるのは即戦力の人材であり、新卒者に対して実践的なスキルを企業が教育・育成するという考え方はほとんどありません。むしろこうした点を強みとして活かすことが、日本企業に必要であるともいえます。先の家族的な運営やプライベートでの交流も、こうした教育・育成した優秀な人材を離職しないように引き留める方法のひとつです。ここに年功序列とは異なる人事考課を導入することができれば、内部での育成だけでなく外部からの人材を引き付けることも可能になるかもしれません。
ベトナムと日本と繋げる人材が求められている
また、留学生や外国人技能実習制度などで日本企業での就業経験をもち、日本とベトナムをつなぐ「ブリッジ人材」の重要性もますます高まっています。しかし、彼らは日本国内での就職ができずに帰国してしまうケースが少なくありません。その一方で、それでも日本企業と働きたいという優秀な人材も数多く存在します。
ワークシフトは、そんなベトナム現地の優秀な人材、そして日本で留学・就労しているベトナム人と企業様をつなぐことのできる、クラウドソーシング・プラットフォームです。日本とベトナムをつなぐ「ブリッジ人材」や、ベトナムへの進出のために働いてくれる現地サポーター(アンバサダー)を海外進出に向けて活用してみてはいかがでしょうか。
ベトナムに進出する際にはこれらの事項に注意することで現地でのビジネスの成功の確率を高めることができます。
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