これから高まり続ける多国籍人材の重要性。その現状と課題
こんにちは、ワークシフトの海外ビジネスサポートチームです。
今回は多国籍人材やグローバル人材の現状についてご紹介します。日本で労働人口の減少により人手不足が深刻化する中、新しい労働力として外国人が求められています。制度として整えられ始めている外国人雇用の実態と、これからの展望についてご紹介していきます。
海外ビジネスを担う人材としての多国籍人材
日本の経済成長の低迷、国内市場における製品・サービスのコモディティ化を受けて海外ビジネスの重要性は年々高まっています。しかしそのような需要とは裏腹に海外展開のビジネスを担える人材は慢性的に不足しているのが現状です。
JETROが2019年に行った「2018年度日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」によると、海外ビジネスの課題の第一位に「海外ビジネスを担う人材」が挙がっています。
個別の日本企業にとっても、日本市場全体にとっても、海外ビジネスを担うことのできる人材の確保が当面の課題と言えそうです。
また、一口に「人材」と言っても経験やスキルの面から多様な人材が存在します。まずは「日本人人材」と「多国籍人材」の二つに分けて、海外ビジネスを担う人材の特徴を検討し、その後多国籍人材について更に深掘っていきます。
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海外ビジネスを担う日本人人材
まずは海外環境に適応できる日本人です。「グローバル人材」という言葉が取り沙汰されているように、海外の取引先と取引のできる日本人人材は日本企業にとって重要なリソースです。
「グローバル人材育成推進会議中間まとめ」(2011年6月)(グローバル人材育成推進会議)は、グローバルビジネスを担う多国籍人材に必要な要素として、
①英語をはじめとした語学力 ②主体性・積極性、チャレンジ精神、協調性・柔軟性、責任感・使命感 ③ 異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティー
を挙げています。
しかし「第7回新入社員のグローバル意識調査」(産業能率大学,2017)によると、2017年度の新入社員の内60.4%が「海外で働いてみたいとは思わない」と回答、そのうちの63.6%が「語学力に不安があるから」と回答しています。
このデータだけで断言は出来ませんが、語学力が海外志向に影響を与えていることは考えられます。しかし会社で受けられる海外関連の研修制度は、一定以上の語学力があることを前提とした上で応用的なスキルを提供するものが多いため、先の定義で言うグローバル人材となる素養を高めるというよりは、既にグローバル人材である人向けのものと言えるでしょう。
語学スキルや現地の文化理解などのスキル・経験は大学までの教育や環境に左右されるため、グローバル人材は国内に十分いるとは言い難く、国内企業による人材獲得競争は非常に激しくなっています。
また、海外ビジネスにおいては上記に加えてビジネス内容に即したスキル(マネジメントスキル、ITスキル…)も要求されます。
このようなスキルを全て兼ね備えている人材の市場価値は高く、獲得が大変なことは想像に難くありません。
海外ビジネスを担う多国籍人材
そこで、海外ビジネスを担える存在としてもう一つ浮かび上がってくるのが「高度なスキルを持つ多国籍人材」です。在留資格の制度変更を受けて(後述)、高度なスキルを持つ外国人材は今後ますます日本で働きやすくなります。
高度なスキルを持つ海外人材を適材適所に配置することで、企業の競争力向上に繋がります。
日本企業が多国籍人材を登用するメリット
日本企業が多国籍人材を登用するメリットは以下が挙げられます。
【事業の海外展開、新規顧客の獲得】
外国語に堪能、かつ現地市場をよく知る多国籍人材を採用することで、事業の現地展開や新規顧客・販路開拓をスムーズに進めることができる。
【外国人材目線での商品開発・ サービス提供】
日本人とは異なる新鮮な発想や視点を持つ多国籍人材が商品開発に取り組むことで、より各国の市場ニーズに合わせた商品・サービスを提供することができる。
【社員の意識変革】
外国人材の活動が日本人社員に新たな「気づき」を与え、社員の意識改革や職場環境の改善、生産性の向上に繋がる。
多国籍人材の登用によって、海外に適応できる日本人だけでは得られないメリットが得られることがわかると思います。
多国籍人材の卵、日本に来た留学生の抱える問題
企業がアプローチしやすい多国籍人材として「海外からの留学生」が挙げられます。日本で学んだ留学生は日本で就職する意欲も高く、企業側も彼らに情報発信がしやすいためです。しかし現状では留学生の採用にあたっていくつかの問題点があります。以下に一例を示します。
留学生にとって日本の就活は難易度が高い
<就職活動の難易度>
日本における就職を希望する留学生は、留学生全体の64%を占めるというデータがある一方で、実際に日本に就職したのは36%というデータが存在します。「日本で就職したくても就活の壁に阻まれてできなかった」という留学生層の存在が伺えます。
また、外国人留学生が就職活動中に企業に求めたこととして、①日本式の就職方法指導や日本語習得支援 ②企業による留学生採用枠の拡大や採用枠の明示 ③留学生向けの採用情報の充実 が挙げられています。
ガラパゴス化している日本の就活に留学生が戸惑っていることがわかります。
留学生を採用したい企業は、このような課題が解消されるような採用活動を行う必要があるでしょう。
アジアに偏った就職希望者
<国籍の偏り>
平成29年度における日本企業への就職を目的とした在留資格を変更した留学生の出身国内訳を見ると、上位から中国、ベトナム、ネパール、韓国、台湾となっており、アジア諸国で全体の95.5%を占めています。
これを鑑みるとアジア以外の国の人材を留学生から確保するのは厳しいことがわかります。アジア以外の西欧圏の人材を必要とする場合は、多国籍人材向けエージェントの利用や現地での採用活動など、多方面へのアプローチが必要になるでしょう。
多国籍人材の受け入れに当たって企業が準備すべきこと
採用だけでなく、多国籍人材の職場環境においても企業側の工夫が求められます。 以下は厚生労働省が2017年に出した「外国人の好活用事例集」より、多国籍人材受け入れのポイントを列挙しました。
1.募集・採用
様々な採用機会の活用、留学生に向けたわかりやすい採用説明、外国人コミュニティの活用 など
2.配属・評価
外国人社員が納得するような公正な評価 など
3.職場環境の整備
外国人も悩み事を相談できるような職場環境、母国の風習を勘案した柔軟な休暇制度 など
4.教育・育成
外国人だけでなく、日本人も語学力向上、外国語で受験できる様々な資格の取得推奨 など
5.生活支援
各種手続きの支援、生活面における宗教や文化の違いに配慮 など
このように、多国籍人材を活用するには企業も相応の準備が求められます。日本企業の生産性低迷や働き方改革などが注目される中、社内の組織や仕組みを見直す良いきっかけとなりそうです。
多国籍人材を登用した有名企業の事例と成果
多国籍人材を活用し業績を上げた事例として、ファミリーマートとNTTコミュニケーションズの取り組みをご紹介します。
■ 株式会社ファミリーマート (コンビニエンスストア・フランチャイズ)
<人材>
留学生・海外新卒を積極採用、多様なポストで登用。
アジアを中心に約10か国から外国人社員を採用。
留学生に加え、2012年からは海外学生の採用も実施。
新卒採用の2割が外国人。
<職場の取り組み>
内定後、また入社後も日本語研修を継続実施。
外国人社員への外国人メンター制度も導入。
外国人社員の個性や適性を踏まえて多様なポストに柔軟に配置。
外国人社員が留学生スタッフ育成を牽引。
<成果>
加盟店から好評で、中国・ベトナムと国籍 を拡大中。ストアスタッフの確保・定着に も貢献
■ NTTコミュニケーションズ株式会社
<人材>
即戦力となる海外の技術系人材としてインド工科大学の学生。新卒採用の2割が外国人。管理職にも外国人 を登用。
<職場の取り組み>
業務プロセスの可視化や標準化を推進し、外国人の働きやすい環境を醸成。
社内の連絡を英語と日本語で実施。
外国人社員を含む全ての社員に業務プロセス共有を可能にする業務管理システムを構築するとともに、サービスの仕様を全世界で共通化。
外国人社員への面談を1年に3~4回実施し、 相談に乗りながら定着を支援。
<成果>
グループ全体の業務効率が向上。
外国人目線で業務を改めて可視化することで事業コストを削減。
サービ ス仕様の共通化により日本語能力が充分ではない外国人なども配置が可能に。
インド人技術者など外国人材の活躍により、 技術向上や大型案件の受注に成功。
「高度人材ポイント制」による多国籍人材の在留資格優遇
昨今の多国籍人材の必要性の高まりを受けて、政府も在留資格の制度変更等を行っています。
特に、高度なスキルを有する多国籍人材を優遇する施策として「高度人材ポイント制」が挙げられます。
「高度人材受入推進会議報告書」によると、高度人材は「国内の資本・労働とは補完関係にあり、代替することが出来ない良質な人材」であり、「我が国の産業にイノベーションをもたらすとともに、日本人との切磋琢磨を通じて専門的・技術的な労働市場の発展を促し、我が国労働市場の効率性を高めることが期待される人材」と位置づけられています。
ポイントの付け方としては、高度外国人材の活動内容を「高度学術研究活動」「高度専門・技術活動」「高度経営・管理活動」の3つに分類し、それぞれの特性に応じて「学歴」「職歴」「年収」などの項目ごとにポイントを設けています。
「高度人材ポイント制」に基づき計算した点数が70点を超える場合、「高度専門職」という優遇措置のある在留資格を申請することができます。
この優遇措置の具体例としては「複合的な在留活動の許容」「親の帯同の許容」「永住許可要件の緩和」等があります。
平成29年6月時点では8,515人が高度人材に認定されており、国は2022年末までに20,000人の高度外国人認定を目指しています。
また他にも、在留申請のオンライン化など、多国籍人材が日本で働きやすい制度に関しての取り組みが進められています。
多国籍人材をスポット利用したいのだけど…
ここまで多国籍人材のニーズや活用の背景をご紹介してきました。しかし実際のところ、社内海外展開のニーズと多国籍人材受け入れのコストとを天秤にかけると、なかなか受け入れ態勢の整備や採用活動に踏み切れない企業が大多数だと察します。
本格的な海外展開の前に、多国籍人材をスポット的・短期的に利用して、簡易的に市場ニーズの把握や現地風習の把握等、を行うことのできる方法があります。この方法のメリットは、採用や受け入れのコストがかからず、進出すべきでないと判断した時にもすぐ撤退が出来ることです。
ワークシフトは210ヶ国以上、100,000人の多国籍人材のネットワークを持ち、海外関連業務向けのクラウドソーシングサービスを運営しています。今後、海外進出すべきかどうかお考えの方、多国籍人材を受け入れる準備は出来ないがスポット的に利用したい方、ぜひお問い合わせください。
参考文献
「2018年度日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」(JETRO,2019)
https://www.jetro.go.jp/news/releases/2019/562442736e6516b5.html
「第7回新入社員のグローバル意識調査」(産業能率大学,2017)
https://www.sanno.ac.jp/admin/research/global2017.html
「平成30年度 全国キャリア・就職ガイダンス」(文部科学省,2018)
https://www.jasso.go.jp/ryugaku/study_j/job/__icsFiles/afieldfile/2018/12/05/01_ryuugakusei_monkasyou.pdf
「平成29年における留学生の日本企業等への就職状況について」(法務省,2018)
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri07_00177.html
「高度外国人材活用事例集」(JETRO,2018)
https://www.jetro.go.jp/ext_images/theme/hr/data/data.pdf
「高度外国人活用のための実践マニュアル」(株式会社富士通総研,2011)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/oshirase/dl/110224aa.pdf
「外国人の活用好事例集」(厚生労働省,2017)
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11655000-Shokugyouanteikyokuhakenyukiroudoutaisakubu-Gaikokujinkoyoutaisakuka/741015kkf0920.pdf
法務省入国管理局HP
http://www.immi-moj.go.jp/newimmiact_3/system/index.html
「高度人材の受け入れ・就労状況」(法務省, 厚生労働省, 経済産業省 ,2017)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/suishinkaigo2018/koyou/dai2/siryou4.pdf
「高度外国人材活躍活躍企業50社」(経済産業省,2018)
https://www.meti.go.jp/press/2018/05/20180525002/20180525002-1.pdf