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ギグエコノミーの登場で変わりつつある個人の働き方と企業のあり方とは?



こんにちは、ワークシフトの海外ビジネスサポートチームです。
今回はギグ・エコノミーが社会に与える影響と、ギグ・エコノミーが実際にどのように社会に広がっているのかを解説します。 ギグ・エコノミー はここ数年で新しく出てきた概念ですが、このキーワードにキャッチアップすることでこれからの時代の働き方や企業のあり方の変化を予想できるのではないでしょうか。

記録的な大雪で再注目されたテレワーク

全国的に記録的な寒さとなった2018年、首都圏を含む関東甲信地域に降り積もった大雪で、電車遅延や路面凍結などの交通障害に悩まされた方々も多いかと思います。

この混乱の中で注目されたのが、オフィスではなく自宅やカフェなど、社外で仕事をおこなう「テレワーク」「リモートワーク」という働き方でした。働き方改革の推進を背景に、IT企業などを中心にテレワークやリモートワークの呼びかけが広くおこなわれており、実際に各自判断でリモートワークを許可した企業なども散見されました。例えば大雪や台風の日の場合、自宅で仕事をすることができれば、わざわざ辛い思いをして出勤する必要も、交通障害で帰れなくなるリスクも負わなくて済むわけです。

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世界で広がり始めているギグ・エコノミー市場

ギグエコノミーに関わっている人の割合

世界に目を向けて見ると、スマートフォンなどを介した途上国でのインターネットの普及に伴って、インターネット経由で単発の仕事を依頼・受注する「ギグ・エコノミー」という経済構造が進展しています。ギグ・エコノミーは主に欧米などの先進国が雇用主となり、インドやパキスタンといったアジアなどの新興国からIT人材などに仕事を依頼ケースが多く、徐々に市場規模を拡大しており、今後7年間で37兆円に成長するという試算も出されています。

オックスフォード大学のインターネット研究所が2017年に出した報告書によると、ギグ・エコノミーで労働者が仕事を請け負うメリットとして、仕事の多様性と労働者の自立性、そしてローカルな労働市場よりも高い賃金を得る機会が生まれる可能性が挙げられています。

また、ギグ・エコノミーの進展はさまざまな制約によって雇用による就業が難しい人材の活用にもつながっています。例えば、ビザなどの関係から現地で仕事を探すことが難しい日本からの海外移住者や、日本の大学へ留学したものの日本国内での正規雇用がかなわず帰国した留学経験者、また海外での起業家やデザイナーなどの専門スキルを持つフリーランス人材にとって、ギグ・エコノミーの広がりは国境を越えた門戸を開放しているのです。

デジタル化が進まない日本の大企業

今回の大雪では、機密保持の観点から社内PCでしか仕事ができない、事前申請が必要なために導入されていても制度を活用出来ないなど、各企業のデジタル化に関する取り組みの差が浮き彫りになる結果ともなりました。日本は良くも悪くも実際に相手と会ってコミュニケーションしながらビジネスを進める対面主義や、紙の書類に印鑑を押すことでタスクが完結したと見なす紙文書主義が、仕事上の習慣に根強く残っています。

世界規模でデジタル化が進んでいる今日、こうした危機管理のスピード感のなさや、情報入手や判断の遅さといった時間と手間のコストが日本経済の生産性を向上していく上での妨げになるのは明らかではないでしょうか。特に先の悪天候の中であれば、テレワーク/リモートワークやデジタル化したコミュニケーションが有効に機能することは容易に想像出来るはずです。

同じ会社内や国内でのテレワーク、リモートワークに限らず、インターネット経由で単発の仕事を依頼・受注する「ギグ・エコノミー」という経済構造の進展は、国をまたいだ幅広い人材の活用を促進しています。社内にはないスキルやリソースを持つ有能な人材を求める上で、国内のローカルな労働市場だけでなく海外という選択肢が出現したことはデジタル経済の恩恵といえるでしょう。



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国境をまたぎ、事業の柔軟性を高めるギグ・エコノミー

特にIT関連やクリエイティブ、マーケティングについては非常に高い需要があり、インドやパキスタン、バングラデシュといった南アジアや、ウクライナやルーマニアといった東欧諸国を中心に請負われています。また、ライティング・翻訳についても幅広い国と地域でニーズがあることがうかがえます。
(出典:https://goo.gl/3CvKqj)

企業側にとってもギグ・エコノミーがもたらす恩恵は大きいです。特定のプロジェクトに必要な人材を必要な期間に契約して雇い入れることができる点で、直接雇用し続けることにかかるコストを抑えることができます。また、社内で賄うことが難しい人材を必要に応じて見つけることができる点で、事業の柔軟性とスピード感をアップすることにもつながります。

特に少子高齢化が進んで労働人口が減少し、人材不足に悩まされている日本企業において、生産性の向上を図る際にはこうしたインターネット経由での人材活用が求められていくことは間違いありません

国際競争力を高めるためにもギグエコノミーを有効活用する

一方で、日本企業が生産性向上に向けた転換を図っていないというわけではありません。日本経済新聞社による設備投資動向調査によれば、2017年度の全産業の投資額は工場の自動化投資などをおこなう製造業を中心に大幅に増えています。予想外の業績改善が1、2年遅れて設備投資に反映されるという日銀の分析をふまえるならば、今後ますます各企業の生産性向上の努力が進むことは想像に難くありません。

実際、終業後の職場を監視するドローンなど、長時間労働の抑制や職場環境の見直しを商機とみて、働き方改革にちなんだ新商品の開発も相次いでいます。こうした生産性向上は基本的に残業代などのコストを削減することによって達成されるものです。

ギグエコノミーの側面でもあるドローン活用

こうした設備投資、特に自動化などの省人化投資の背景には、深刻な人材不足と「人件費が上がると国際競争力が下がる」という企業側の想定があることを忘れてはいけません。人材不足については、すでにIT業界などで深刻化しつつあり、海外から熟練のIT技術者を呼び込むなどの方策が検討され始めています。

ギグ・エコノミーの中で、クラウドソーシング・サービスなどを介して海外の人材を雇うことも、国ごとの賃金水準の違いを利用して人件費を抑えるという点ではコスト削減となります。特にローカルな労働市場が冷え込んでいる国々では、多くの人材がギグ・エコノミー市場へと流れ込んで過剰供給となっているために賃金水準が相対的に低下している場合もあります。
ネットを通じて世界の労働市場が一体化していく中で、失業率の低下と賃金上昇率の相関関係が、日本とアメリカにおいて顕著に低下していく状況も指摘されています。世界的に見ても、賃金や物価が上がりづらい経済構造へと変化が進んでいるのです。

求められる「投資としての人件費」という発想

しかし、高度なスキルを持つ人材は日本で働きたがりません。その理由としては、国籍の問題や日本語による言語障壁の高さもありますが、何より厄介なのは年功序列や終身雇用のような日本の雇用慣行や賃金体系において、彼らのようなグローバルに活躍できるスキルを持った専門家の職務内容に対する賃金水準が、国際水準に鑑みても見合っていないことが挙げられます。

労働者の側からみて、より良い成果を求められた時により良い報酬を求めることは自然なことだと言えます。ギグ・エコノミーにおける労働者は不安定な雇用状況にもあるため、経済的保証の意味もこめて自身の専門スキルや業務内容に見合う賃金を求めるのです。しかし、残念ながら日本の賃金は、全体として賃上げの動向にある先進国主要7カ国の中で唯一、労働者の賃金が2000年の水準を下回っています。

世界の人材獲得競争は人件費をコストとしてではなく、新たなビジネスモデルをつくるイノベーションのための投資と捉えておこなわれています。例えば、中国の通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)が日本国内の新卒採用で初任給40万円を提示したことが話題となりましたが、優秀な人材を確保するために成果に応じた高い賃金を払うことはもはやグローバル・スタンダードな発想なのです。日本がデフレ脱却を目指すため、また日本の国際競争力を上げるためには、年功序列や終身雇用を脱却し、従業員に成果を還元できる発想の転換と仕組みづくりが必要なのではないでしょうか。


ギグエコノミーは個人の働き方も変える

ギグ・エコノミーを支える仕組みづくり

もちろん、雇用の流動化や賃金体系といった制度だけを導入しても、かえって経済秩序の悪化を招く可能性があります。近年ギグ・エコノミーが報酬や身分保障面での不安定さや商品・サービスの劣悪化を招くと危惧されているのは、こうした働き方の仕組みのみが流入することへの不安感も多いにあるでしょう。
重要なのは、クラウドワーカーの実態調査に基づく最低報酬や社会保障をめぐる法整備と発想の転換がセットで進むことです。

既にギグ・エコノミーにおいて日本より先行し、さまざまな問題を経験している欧米諸国では、セーフティーネットの制度改革に向けて議論や法整備が進んでいます。一方で、日本は働き方改革関連法案の施行日を1年程度延期する検討がおこなわれています。「労使の制度対応に時間がかかる」という判断は妥当だとしても、セーフティーネットの法整備や拡充が10年以上かかることを鑑みれば、早くから議論を進めて備えておくことが重要なのは間違いありません。




ギグ・エコノミーの中での働き方のゆくえ

副業・兼業について、日本における一部企業の熱心な取り組みは見られるものの、日本全体として見てみるとこれらの取り組みは残念ながらまだまだ遅れていると言わざるをえません。厚生労働省が副業・兼業の原則容認に舵を切ったものの、実態が伴うようになるのは当分先となるでしょう。

かたや海外に目を向けると、ギグ・エコノミーは着々と広がりを見せており、AirbnbやUber、WeWorkなども日本にも上陸しつつあります。そして、ソフトバンクのように、ギグ・エコノミーの広がりを予感している企業はすでに大規模な投資をおこなっている現実もあります。

毎年スイスで開催されているダボス会議では、IT企業経営者らがおこなったテクノロジーの将来について議論の中で、電子商取引が将来若者や中小企業が主役の経済への移行をもたらす可能性が示唆されています。その時、製造場所や職場がどの国にあるかはもはやあまり大きな意味を持たず、各国政府は「『どう規制するか』、から『どう手助けできるか』」へと姿勢を変える必要があるとも指摘されています。

ギグ・エコノミーの広まりによる新しい働き方は雪解けのように着々と迫ってきているのです。今は踏み固められた氷のように、まだ足下をすくわれるような気がする点も多々あるでしょう。しかし、時流を捉え、事業のスピード感や判断力を高めて生産性を向上していくには、旧来の日本型労働慣行から変わっていかなければならないと言えます。そしてその可能性は高齢者や女性の活用といった国内のローカルな労働市場だけでなく、海外のグローバルな人材にも開かれているのです。





 

 
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