モンゴル語の翻訳は難しい?日本語からモンゴル語に翻訳を依頼する際の注意点
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こんにちは、ワークシフト海外ビジネスサポート部です。
今回はモンゴル語の翻訳に関して、日本からモンゴルへ進出する企業が影響を受けそうな事項を中心にご紹介していきます。
なお、今回の文章はワークシフトに登録しているモンゴル在住で日本語を話せるモンゴルの方に原文を作成していただきました。
日本語をモンゴル語に翻訳する際の注意点
モンゴル語は日本語と文法的な語順が似ているため、翻訳や通訳の難易度が低いと言われています。 しかし、モンゴル語と日本語と大きな違いは「漢字」と「両国の文化の差」に現れます。 そのため翻訳する際には両国の文化や人々の考え方の違いを上手く捉えて、言葉の額面通りではなくその伝えたい内容を理解した上でその本質を分かりやすく翻訳できるかがポイントになります。
歴史的にモンゴルは中国という強大な漢字文化園と隣り合わせながらもその漢字文化に馴染むことはありませんでした。その一方で、ロシアのキリル文字を併用するなどしており、根本的な中国との思想や文化の違いが表れています。
13世紀に勢いがあったチンギスハーン帝国以来、モンゴルは世界の国々を次々と制覇していた時代もありました。これらの時代を通して、言語の文字の一部は変わったものもありましたが、言語の基本的な部分が大きく変わることはありませんでした。
ところが、現代は技術の発展により海外とのやり取りやIT技術の開発などで外来語や新しい言葉が生まれてきているのも注目のポイントです。
英語とロシア語を介すことでよりスムーズに翻訳できるモンゴル語
外来語に関して言えば、モンゴルは旧ソ連時代から約70年間もの間は共産主義体制となりその恩恵としてヨーロッパ的な教育や文明の影響を受けていた過去があります。その結果、現在の中年層には外国語としてロシア語が話せる人が一定数存在します。例えば日本の場合、科学的な専門用語のほとんどは英語がベースとなっていますが、これがモンゴルの場合、ほとんどの場合ロシア語が由来となっています。
内容にもよりますが、日本語からモンゴル語に翻訳する際にはロシア語と英語を補助にして翻訳する場合がほとんどです。
モンゴル語を翻訳する際には直訳と意訳を適度に使い分ける
各言語には幅広い表現方法があるため、基本的には直訳ではなくそれぞれの言語の特性や文脈を踏まえて翻訳者が意訳を行いますが、あえて直訳することもあります。
日本語の表現は非常に多様ですが、ある特定の分野について翻訳する際にはあえて直訳することが適切なこともあります。
例:
日本語原文:
「慶喜は当初父斉昭に期待され、それが運のたねになった。」(『最後の将軍』司馬遼太郎全集第二十巻p.302)
モンゴル語訳:Эхлээд эцэг Нариаки нь Ёшинобүд итгэл найдвар тавьж байсан нь түүний хувь заяаны үр болсон. (Шиба Рётаро. Сүүлчийн Шёогүн. худ. 26)
ここで出てくる「運のたね」という表現はモンゴル語には存在しませんが、あえてそのまま直訳する事によって新しい表現でありながら分かりやすい言葉に訳され、読者に新鮮な刺激を与えることがあります。
逆に、文字通りに翻訳すると意味すら伝わらなくなる可能性もあります。そのような場合には説明的な翻訳を当てる方法が相応しいです。
例:
日本語原文:
「幕閣と大奥は、水戸のあくのつよさをきらい、慶喜よりも紀州の少年藩主を迎えようという色が濃いが、しかし老中松平忠固の態度は表面いずれともつかない。」(『最後の将軍』司馬遼太郎p.49)
モンゴル語訳:
Бакүфү засаг, хатны өргөөнийхөн Мито овгийнхны хорт санааны айхтарт дургүйцэн,Ёшинобү гэхээсээ Кишюү овгоос залуу хошуу захирагч хүүг залах хүсэлтэй хүн олон байв. (Шиба Рётаро. Сүүлчийн Шёогүн. худ. 39)
「色が濃い」という表現は日本語で慣用句的な意味を含んだ表現であるため、この箇所をそのまま直訳するとモンゴル語では不自然な意味に変わってしまいます。
この場合には元の日本語を意訳し、「希望のある人が多かった」と訳すことで結果的に分かりやすい表現になります。
日本とモンゴルの商習慣の違い
日本とビジネスを行う場合におけるモンゴルの環境を、ビジネスにおけるフレームワークであるSWOT分析で周辺国と差別化してみます。
モンゴルのSWOT分析
日本留学経験者が多く、親日国家であり民主化度が高い
国民の教育レベルが高い
そして比較的にビジネスを始めやすい環境
レベルの高い日本語教育が実施されている
言語習得レベルが高いので意思疎通ができる
インフラとしてはインターネット通信環境が比較的良好
陸路空路ともに日本との流通経路が確立されている
法人税が安い(配当金の送金時の課税を除く)
中国沿岸部などと比べると人件費が安い
労働力を確保しやすい
自然災害が少なく治安が比較的よい (日本の外務省に注意エリアに指定されることはほとんどない)
まだ手つかずの自然資源を有する
開発されていない地下資源を多く有する
日本とは経済協力連携協定(EPA)を締結しているため、多くのモンゴル企業が日本に関心を抱いている
日本の重点援助国である
近隣国の大都市への物流経路が確立されている
現在消極的ではあるが、基本的に消費意欲は旺盛
食生活も含めたライフスタイルの近代化による消費活動
日本人社会が狭いため、日本人同士による係争はほぼない
大手企業が進出しにくい
市場規模や市場が小さい分、景気が回復すると反映も早い
日本人との国民性、商習慣の違い
日本ーモンゴル間のビジネス支援の機関が少ない
人口が少ないためマーケットが小さい
モンゴル国内での資金調達はリスクが高い
品質、納期等への認識における日本人との相違
契約に関する日本人の認識との相違
仕事に対する日本人の価値観との相違
取引先に対しての与信が難しい
SEZ(経済特区)の魅力に乏しい
内陸国である
中国・ロシアの政策により経済が左右される
国内政治が不安定
行政機関が4年ごとに刷新される
法整備がまだまだ未熟
明確な経済の回復気配が見えない
資源ナショナリズム
ウランバートル以外の商圏へのアクセスが遠い
ソブリン格付けがB-と低い(S&P)
これらを総合すると、日本がモンゴルに進出する際には、人やビジネス環境といったインフラは充実しているもののマーケットのサイズが大きくないという評価ができるかと思います。
ここ1,2年で大きく経済成長を始めたモンゴル
直近ではモンゴルは大きく成長し始めています。2016年に策定した農業分野の開発を中心とした総合的な経済の多様化を推し進める「2016~2020年行動計画」が功を奏し、2017年と2018年の実質GDP成長率は5%と、近年にはない勢いで経済成長を続けています。モンゴルがこの計画の通りに成長を続けるのであれば日本企業にとっても大きなビジネスチャンスになると言えるでしょう。
モンゴル人に必要な「モノづくりへの考え方」
モンゴルは社会主義から民主主義になってから28年立っています。この間、たくさんの失敗と苦い経験を繰り返してきました。
日本との大きな違いとしては、ものづくりの精神が近代の若者に乏しく、それが物事に対する態度に表れてしまう事がしばしばあることです。
物を作って売る人は生計を立てるために納期や約束を守ったり常に自分をチャレンジしていますが、そうではない、あるいはその精神が分からない場合は日本人と取引やコミュニケーションを取る際に価値観の相違が生じるのは仕方ないことです。
最近はモンゴルで日本の高等専門学校で行われている教育カリキュラムを取り入れて、将来日本の会社にも通用できる人材を育成する環境が整ってきています。
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