時代とともに進むグローバル化に加えて、インバウンド訪日客数の増加、TPPの締結など企業にとって海外とのビジネスチャンスは増え続ける一方です。逆にむしろ海外とのビジネスを想定することが安定性のある経営にとって必須の状況が今後も続くことになるでしょう。
企業が海外とビジネスを行う上で取ることのできるビジネス形態として海外進出、インバウンド、越境ECなどがあります。これらのビジネス形態においてどのような問題があるのか、またはこれからの展開はどのようになっていく展開なのかを最新の事例とともに解説します。
また、これらのビジネス形態とクラウドソーシングでどのような展開をすることができるかにも焦点をあてて解説をしていきます。
中小企業における海外進出の実態
中小企業庁の「中小企業白書2014」によると、日系企業が海外で事業を展開する上で、「現地の市場動向・ニーズの把握」は、販売網や人材の確保に次ぐ重要な要因の一つに挙がっています。
また、「今後の事業計画において販売と生産機能の海外進出先として検討対象としている地域」については、中国と回答した企業が全体の約40%で、残りはタイやインドネシアといったASEAN諸国や北米、西欧に関心を寄せています。
また、輸出や直接投資を開始し、成功するためには事前にしっかりとした準備を行うことが必要です。輸出を実施している企業が、最も重要と考える準備の内容を見たところ、「現地の市場動向やニーズ の調査」や「提携先・アドバイザーの選定」と回答する企業が多く、これから輸出を開始する企業はこれらの準備にしっかりと取り組むことが必要です。
出典:
http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H26/PDF/09Hakusyo_part3_chap4_web.pdf
中小企業の海外進出のリスク要因は?
中小企業海外展開支援関係機関連絡会議の平成26年3月の「海外展開成功のためのリスク事例集」のレポートによると、現地法人が直面しているリスクとして「人件費の上昇」、「為替の変動」、「現地人材の確保・育成・労務管理」、「法制度や規則の複雑さ、不明瞭さ」などが挙げられています。
昨今の、中国を中心としたアジア諸国の人件費の高騰や、円安への為替変動は海外進出の大きなリスクと言えるでしょう。一方、人口減社会に直面する日本では、海外進出や外国人ニーズを確認することが企業にとって重要な戦略になります。海外展開を考える場合は、やはり『まず国内でできることを十分行ってから検討する』のが重要だと考えます。
参考:http://j-net21.smrj.go.jp/expand/overseas/pdf/overseas_risk_cases.pdf
越境ECを展開するために活用できるクラウドソーシング
「越境EC」はあまり聞きなれない言葉かもしれませんが、中小機構が力を入れている海外向けEコマース全般の事を指します。越境ECが注目されている理由は大きく3つあると考えています。
– 新興国の中間所得者層が急増し、ネットインフラが整備されてきた
– 言語や決済の壁が以前と比べ大幅に低くなった
– 国内の人口が減ると予想される中、新たな購買力を海外に求める必要がある
さらに、越境ECに関する意識調査のデータを見ると、中国では実に86%が「積極的に利用したい」「機会があれば利用したい」と答えています。日本国内では対応が難しい、現地の市場調査、商品のキャッチコピー、デザイン、翻訳など様々な分野でクラウドソーシングが活用できるのではないでしょうか。
(出典:平成24年度電子商取引に関する市場調査(経済産業省)データをワークシフトにて加工)
クラウドソーシングを外国人観光客対策に活用する
最近、観光客の急増にともない「インバウンド」が注目されるようになりましたが、実は「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」に従って2002年から始まったビジット・ジャパン・キャンペーンがその始まりとなっています。
訪日観光旅行者は2003年度に521万人でしたが、2014年には1,300万人を超え、訪日外国人が日本滞在中に使った旅行消費額も2兆円305億円と前年比43・3%と大幅に増加しました。その一方で急激な訪日観光客の増加に日本国内の事業者のインバウンド対策がまだまだ追いついていないのが現状です。特に観光地の小売店などは多くの外国人向けにどのようにビジネスを展開して行けばよいかを模索している状況です。
クラウドソーシングでは、現地のフリーランサーを活用し下記のような仕事を依頼する事ができます。
– 観光に関する意識調査
– 日本旅行を企画している現地主要企業のリスト化
– 観光客向けのパンフレットやチラシのデザインと翻訳
– 現地語でのブログ作成や旅行情報への書込み依頼
– 外国人向けWebサイトの政策 等々
TPPとクラウドソーシング
5年を超える交渉の末、先日TPPが大筋合意に至りました。まだまだ不確実な要素が多いものの幅広い分野において関税の撤廃やルールの統一により、新たな自由経済圏が誕生することになります。
TPPは「例外なき関税撤廃」とも呼ばれ、産業保護のための除外品目を原則なくすことでより高いレベルでの自由貿易を目指しているのが特徴です。また、知的財産権、サービス、金融などの様々な分野におけるルールの統一化もTPPには含まれており、国を超えたルールの策定によって経済のさらなるグローバル化を期待することができます。
TPPの締結により、ビジネスのグローバル化、新たな労働力の確保、更にはコストとスピードを意識した市場開拓が必須です。グローバル化とはすなわり競合が全世界に拡がることでもあるからです。社内組織をいきなりグローバル化に対応させるのは大変ですが、クラウドソーシングを活用して柔軟に対応することが可能ではないでしょうか。
出典:内閣官房TPP政府対策本部HP http://www.cas.go.jp/jp/tpp/
地方企業の海外進出で支障になりうる大きな要因は?
先日北海道新聞に「海外進出・検討26% 道内主要企業 広がる市場魅力」という面白い記事を見つけました。人口減少のため国内市場が縮小する一方、高い経済成長が見込まれるアジア各国へ新たな活路を見出し、海外進出を検討する企業が増えているといった内容です。
大都市集中が続いている日本では、他の地方企業も同じような状況と考えられます。記事の中で、海外展開の支障や課題に関して最も多かったのは「習慣・文化の違い」でした。今後ビジネスのグローバル化が進む上で避けては通れない課題ではありますが、現地の人材に直接アドバイスを受けることで解決する問題も多くあると考えています。今まで出来そうで出来なかった、「現地の人にちょっと依頼してみる」をクラウドソーシングで可能にしてはどうでしょう。
出典:どうしんWeb http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/economy/economy/1-0191784.html
『新輸出大国コンソーシアム』が設立!
先月、中小企業の海外進出を支援する官民連携組織「新輸出大国コンソーシアム」が設立されました。TPPの合意をきっかけに、海外進出を目指す企業がその恩恵をうけられるように、事業の計画段階から市場開拓に至るまできめ細かくサポートするのが目的です。
地方自治体や経産省などの関係省庁やJETROなど約30の機関が連携して支援します。相談窓口はJETROに設置されるようなのですが、政府は相談窓口利用者の満足度を60%以上にするとの目標を掲げています。
光栄なことに、第一回『新輸出大国コンソーシアム』の中小機構SWBS事業でワークシフトが社名入りで紹介されました。今後とも皆様のお役に立てるようサービスの充実を図ってまいります。
出典:JETRO
九州企業の約6割が海外展開中または展開を検討している
九州経済産業局は、九州の約6割の企業が何かしらの形で海外展開を実施している、若しくは検討していることを発表しました。九州は土地柄、中国や韓国に近く、今後東アジア、ASEAN地域とのビジネスを積極的に拡大していくと考えられます。
興味深い点としては、海外で事業展開を実施している理由として「新たな市場の開拓」が突出しており、「コスト削減」のための展開は少ないという結果です。今後、海外におけるマーケティング活動が更に重要になっていくと考えられます。
参考資料:http://www.kyushu.meti.go.jp/press/1604/160408_1.html
訪日観光客の胃袋をつかむ
昨今の和食ブームに後押しされ、オリンピックを待つまでもなく、本場の和食を堪能することを楽しみに来日する人は非常に多いです。 五輪競技会場予定地を有する神奈川県は、外国語メニューを簡単に作成できる飲食店向けサイトを開設しました。
自動翻訳で多言語のメニューを作ることは可能です。しかし、どのような食材や調理法による料理なのか、食べる人の食習慣や宗教上NGではないか、そして何より読んだ人に意味が通じ、外国人の目線で使い勝手が良いものか、チェックすることはとても大切です。
日本が世界に誇るおもてなしは、すなわち相手の意を汲むことです。海外からのお客様におもてなしの精神を存分にアピールし、おいしい食ベ物を満喫してもらうべく、外国人の嗜好や動向の調査を始めるのも一策でしょう。
成長著しい東南アジアのEC市場開拓に向けて
インターネット通販サイトを通じて自国の商品を販売し、海外の人が購入する越境eコマース(越境EC)が拡大しています。経済産業省による「電子商取引に関する市場調査の結果」では、『平成31年までの日米中3か国相互間の越境EC規模(試算)では、平成27年から平成31年までの間に日本は約1.5倍、米国は約1.6倍、中国は約2.9倍の規模となり、日米中3か国間における越境ECによる購入総額合計は、平成31年までに約6.6兆円にまで拡大する可能性がある』とされています。
また、対東南アジア市場では、2015〜2020年にかけてECの市場規模は年平均成長率17.7%で成長し、2015年の112億米ドルから2020年までに252億米ドルまで成長する見通しがあります。 世界的に、日本の高品質でユニークな商品に対する需要が高まっている今、どのような商品が現地で求められているのか、ニーズを的確に汲み取る必要があります。そのために、現地の市場調査を徹底的に行なうなど、『事前準備』をいかに行なうかが、EC市場開拓成功のカギとなるでしょう。
出典:http://www.meti.go.jp/press/2016/06/20160614001/20160614001.htmlhttp://www.frostjapan.com/232/pressrelease09052016/
東南アジアにおけるSNSと海外Webマーケティング
SNSと海外Webマーケティングは今や密接な関係にあります。 世界の国々はSNSに費やす時間が日本よりもずっと多く、とりわけ東南アジアでは一日当たり日本の8倍以上となっています。
東南アジアにおいてはSNSの普及率が前年からの増加率で10%を超える国も多く、SNSを用いたマーケティングは今後ますます効果的に行えることでしょう。さらに東南アジアでの広告費は他国よりも低く抑えられることを踏まえると、この方策は非常に合理的なアイデアです。
加えて、ワークシフトが提供するクラウドソーシングサービスはSNSとの相性が非常に良いです。経済成長率が前年比4.5%と著しい東南アジアにおける、SNSを利用したウェブマーケティングの持つ可能性を試してみませんか。に関するリサーチ 詳しくは最新のワークシフトリサーチ『東南アジアにおけるSNSと海外Webマーケティング』をご覧ください
(https://workshift-sol.com/research/detail/28)
インバウンド対策を外国人目線で考える
2016年度の訪日外国人客数は前年度比22パーセント増でした。ところが宿泊客はわずか9パーセント増にとどまるという面白い統計が出ています。詳しくみてみると、民泊や夜行バス、クルージングの船舶、車中泊などで賢く宿代を浮かせる観光客が増えているようです。
また、昨年の訪日観光客数の前年比上昇率が最も高かったエリアは、意外にも香川県でした。お遍路や瀬戸内海に浮かぶ島々の美しい景色に魅了された訪日客が多かったようです。典型的な大都市中心の観光やショッピングの旅行プランでは、外国人の集客が難しくなりつつあることも事実です。
訪日客のニーズを捉え、案内やメニューの多言語翻訳などスムーズな受け入れ体制を構築し、さらには現地SNSを活用したマーケティングを展開するなど、外国人目線でのインバウンド対策が今後ますます重要になってきます。
(出典1)https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/visitor2017/
(出典2)https://honichi.com/13782