リサーチ2015/09/20
海外IT人材の獲得とクラウドソーシングの関係
① 日本におけるIT人材の不足
日本では少子高齢化が進み、労働力が減少しています。日本の労働力人口は2014年時点で約6,600万人ですが、2030年には5,900万人程にまで減少する見通しです。この労働力不足が特に深刻なのがIT業界です。独立行政法人情報処理推進機構が作成した「IT人材白書2015」のデータによると、2014年時点でIT企業の87.4%がIT人材の不足を訴えています。
この状況の克服に向け政府も動き出しています。日本経済新聞の2015年9月4日朝刊「アジア人材呼び込み インドなど就職念頭に留学」によると、政府は東大や電機メーカー大手などと組み、アジアの理系大学生をIT人材として日本企業に採用する仕組みを作り始めています。優秀なIT人材を輩出しているインド工科大学などと連携し、日本での就職を前提に留学生を受け入れるシステムです。留学生として日本でIT人材としての価値を高めた後は、日本のIT企業と留学生のマッチングを行って就職を斡旋します。このような取り組みを通じて、政府は2020年までにIT関連の外国人専門技術者を現状の約3万人から6万人に倍増させる計画です。
このように海外から優秀なIT人材を取り込もうとしている現状は日本にとって大変良いことだと思います。一方、それほど簡単に成功するかどうかは疑問が残るところです。実際、現在も海外から来たIT人材が途中で帰国してしまい、日本に定住しないケースが目立っています。また、これはIT人材だけでは無く、海外の労働力全般についてもいえる事です。その要因はいくつも考えられますが、大きく2つ挙げてみます。1つは、日本人ばかりのオフィスにおける居心地の悪さです。東南アジアなどから来たIT人材は、母国より日本で働く方が給料を多く得られるという点では良いかもしれません。しかし、日本語が飛び交う中で必死にコミュニケーションを取ったり、伝統的企業体質に縛られたりするのは心地良くないでしょう。アメリカなどでは企業人材のグローバル化が進んでいるため、海外人材の働きやすい環境が整えられています。英語で仕事ができるという点でも魅力的でしょう。日本も同様な環境を整備しないと、海外IT人材が日本に定住しやすくはならないでしょう。2つ目の要因は、在留資格です。外国人の在留資格は30種類程度あり、そのうち、「外交」、「永住者」の二つの資格以外は、在留期間が最長5年と設定されています。この5年という在留期間の設定によって、海外IT人材が長期間日本で働けない状況となってしまっています。
② 海外IT人材獲得のためのクラウドソーシング
さて、①で述べたように日本が海外IT人材を補強するためにはまだ時間がかかるように思われます。海外IT人材を自社オフィスで受け入れやすくするために、社内公用語を英語にしたり、組織改革をしたりなど、超えなくてはならないハードルは高いものだと考えます。そもそも、海外から人材を受け入れること自体も不安が多いでしょう。
そういった悩みを解決する一つの手段として、クラウドソーシングの活用が挙げられるでしょう。インターネットを活用し海外に住む優秀な人材に仕事を依頼する事で、IT人材の不足を賄う利点は以下の通りです。
- わざわざ日本に来てもらわなくても、インターネット経由で仕事を依頼できる。
- 世界中の優秀なフリーランスの中から、依頼したい仕事にマッチした人材を案件ごとに選ぶことができる。
- 日本にIT人材を受け入れる場合と比較して、一回一回の仕事を依頼する際のハードルが低い。また、人材の能力を試すこともできる。
以上のように、日本のIT人材の不足を即時に解決してくれるのがクラウドソーシングです。日本政府の海外IT人材獲得の取り組みに期待しながら、現状の不足時の対応はクラウドソーシングで対処するのが良いでしょう。
弊社のクラウドソーシングサービスサイト「ワークシフト(Workshift)」でも、世界94ヵ国、2万人以上のフリーランスが登録されています。彼らの中には大学院卒業生なども多く存在しており、今年6月の調査では、フリーランスの52%が大卒以上、17%が大学院卒業者であることがわかりました。それだけ優秀な人材が海外には豊富に存在しており、日本のIT企業もそのような人材が待機しているプラットフォームを利用しない手はないでしょう。
まとめ
日本ではIT人材の不足が深刻化しています。政府は海外の優秀なIT人材の獲得に向け取り組みを開始していますが、効果が現れるまでには時間がかかると見込まれます。不足したIT人材を即座に賄うことができるのがクラウドソーシングです。クラウドソーシングの活用は、海外人材を日本に受け入れるよりもはるかに障壁が低いので、日本企業は活用すべきでしょう。
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参考文献
『日本経済新聞』2015年9月4日朝刊「アジア人材呼び込み インドなど就職念頭に留学」
「IT人材白書2015 概要」独立行政法人情報処理推進機構 2015年4月