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インターネットを介して、企業などが個人に仕事を委託する「クラウドソーシング」を利用する人が増えています。矢野経済研究所の試算によると、2013年度のクラウドソーシングサービス市場は、前年度比101%増(2倍)の215億円(仕事依頼金額ベース)となっています。業者の新規参入が相次いでいることなどから、18年度には現在の8倍以上、規模にして1820億円の仕事が「クラウドソーシング」でやり取りされると予測されています。[i]

今回は、海外のクラウドソーシングの傾向と日本のクラウドソーシングの傾向を比較検討してみます。日本のクラウドソーシングの傾向は、単純作業の業務委託としての面が強いことが特徴です。例えば、よくある仕事にライターの仕事があり、記事一本に対して200円から300円の依頼が多いようです。掲示予算が5,000円~と記載があったとしても、ページをクリックすると「記事25本で」という但し書きがついていたりします。記事一本の文字量は大体が1,000字程度なので、1文字0.1円~0.8円程度、というのが現在のボリュームゾーンのようです。[ii] 理由としては、「経験が無くても、誰でも書ける記事」というのが強いようです。

それでは、少し仕事の内容が専門性の高いものになるとどうでしょうか。例えば、ロゴ制作はイラストレーター等のソフトを使って行われます。このソフトのインストールは勿論ですが、使用するのにもスキルが求められます。ロゴの応募は一件1万円~が相場です。最近では、LINEのスタンプ募集も多くみられます。本来プロに頼むと、安くても10万円はしてしまうものです。[iii]

このように考えると、クラウドソーシングは日本市場においては、単純作業のアウトソーシング先としての傾向が強いです。それは人手の足りない仕事を、空いている時間に誰かに安価でやってもらおうという思考です。勿論、安価というのは一つの重要な要素です。しかし、例えば自社にない専門的なスキルを求めるという方向性も面白いのではないのでしょうか。

海外に目をむけ、米国大手のクラウドソーシングサイトであるElanceを見てみましょう。Creative Writing Job(ライティング)の仕事に関しては、一時間あたりの平均報酬が18米ドルです。仕事の価格平均は823米ドルです。ライティングの中でも、学術的なライティングやゴーストライターなど様々な分野で分かれています。しかし、平均的にみても18米ドル前後/時間が標準のようです。

同様にイラストレーションのスキルについても見てみましょう。一時間あたり20米ドルが平均で、758米ドルが仕事の平均価格でした。このような例からわかるのは、やはり日本においてのクラウドソーシングとは単純業務の外部委託という面が強いことです。そこでは、専門性が求められるのではなく、汎用性の高い仕事が多いということから明らかです。

中でも面白いのは、このElanceには、日本のクラウドソーシングのサイトにはないような募集案件も沢山あるということです。それは、主に金融マネジメントだったり、ビジネス分析の仕事だったりします。こうした仕事は前述したように専門的なスキルがないとできません。こうした仕事は、現在の日本では自社の外に頼むという発想はなかなかないものです。グラフを見ても明らかなように、スキルの需要として上位にあがってくるのは、金融やマネジメントなのです。

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つまり、フリーランスとしてクラウドソーシングだけを利用して生活していくというのは現状の日本では難しいということができます。あくまでも副業として、あるいはお小遣い稼ぎとしての側面をまだ脱せていないようです。

以上のように考えると、日本と海外では、「専門性をもった人が活躍の場を広げる」といった観点で大きく差があると読み取れます。特に、単に低賃金で競うのでは、今後広がる世界規模での戦いにはついていくことができません。だからこそ、一つの企業の中だけではなく、自分の磨いたスキルを色々な場所で活用させて生計をたてていくといった欧米型の未来のほうが、クラウドソーシングの可能性が広がっていくと考えられます。

ところで、日本では学校を卒業と同時に就職活動を行い、その後は終身雇用といったモデルが一般的です。勿論、終身雇用という言葉自体が死語となりつつあるのかもしれませんが、フリーランスで活動している人はまだまだ少数です。しかし、2013年3月のGuardian紙に、「アメリカではフリーランスとして働く人が増加している」という記事があります。その中には弁護士なども含まれますが、この領域は米国経済の中でも最も急速に成長している分野になっていると考えられます。その記事では、フリーランスを取り巻く環境がまだ整備されていないことを指摘しています。「私達は21世紀の市場に生きているのに、20世紀の法や習慣に縛られている」という言葉でその現状を表します。

アメリカ国内のこうしたフリーランスは2005年の時点で、4,260万人にものぼります。これは、アメリカの労働力の三分の一に当たります。「2005年当時よりもこの成長は著しいので、2020年までにはこうした働き方は全労働人口の40%を占めるだろう」と2010年に予測されています。[iv]

こうしたフリーランスの中には、日本の言葉で言えば派遣社員や個人事業主、フリーターも含まれています。これらの言葉はかなり意味が違うので、一概にこの傾向を増やした方がいいというのは間違っているのかもしれません。しかし、日本は少子高齢化社会の急先端であります。労働人口は今後もどんどん減少していきます。現在、安倍政権下で「女性の活用」が唱えられていますが、こうした労働人口の減少を打破するために白羽の矢がたてられたのが専業主婦でした。

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専業主婦の中には自分で望んでなった方もいますが、子育てのために仕事を辞めざるを得なく、その後復帰が難しく専業主婦、あるいはパートとして働いている方も多くいます。上の図は日経DUALのデータを弊社で加工したものです。グラフにも明らかなように、年を重ねるにつれて女性の正社員は減少傾向にあり、代わりにパートが増加しています。その中には専門的なスキルをもっていながら活用できていない人も多くいるでしょう。

そのスキルが突出していれば個人事業主として活躍できる場合もあるのでしょうが、そこまではいかずともスキルを持っている人に光をあてられるのがクラウドソーシングの真骨頂だということもできます。派遣労働では、最低契約期間が一ヶ月以上なので、実際に会社に居る拘束時間が求められる場合が大半です。しかし、フリーランスは、その案件ごとに報酬を受取るので、もっと自由に時間を使うことができるのです。また、派遣の場合だと切られたら終わりですが、フリーランスの場合だと掛け持ちをすることが可能なので、雇用先のリスクヘッジにもなります。

たとえば、一つの雇用先の労働環境や条件が酷ければ、その契約を打ち切り、同時並行で受注している他の会社の仕事に専念することが可能なのです。そして何より、自分の強みであるスキルを色々な環境で活かすことが出来ます。

同じアウトソーシングでも、誰でもできる単純低賃金労働から、スキルが求められる高収入労働へは大きな差があります。その差は、もちろん自分のスキルを磨くことでしか埋めることはできないのですが、自分の才能をもっと開花させたいと思っている人たちにとっては良い傾向だということが出来ます。そして、雇用先とプロフェッショナルとして対等な関係を築くことにもつながります。

このように考えていくと、日本の企業側の問題も出てきます。それは、副業規定です。多くの日本の会社は副業を禁止しています。勿論、海外の会社にも禁止しているところはあるのですが、考え方の違いとして、「週末に自分の才能を活かし、稼いで何が悪いのだ」という発想があります。

先ほど述べたように、労働人口の減少や、外国人採用が増えている日本社会の中でも変化に対応していかなくてはなりません。そして、アウトソーシングも増えていきます。その流れの中で、日本でも現状のような低賃金型ではなく、スキル型の方にシフトしていけると、より可能性に溢れた未来が広がっているはずです。

【参考文献】

[i]「財経新聞」http://www.zaikei.co.jp/article/20140807/208081.html
[ii]クラウドワークス http://crowdworks.jp/lp/mm/zaitaku/articles/230
[iii]ブランデザイン http://brandesign.jp/price.html
[iv]ガーディアンhttp://www.theguardian.com/money/us-money-blog/2013/mar/28/freelance-workers-america-workforce

【グラフ参考】
日経DUAL http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=1617&page=4
Elance https://www.elance.com/q/online-employment-report

著者:ワークシフト編集部

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